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重機転落事故事例から学ぶ労災上乗せ保険の活用法

建設現場での重機事故は企業経営に深刻な影響をもたらします。政府労災保険だけでは十分な補償ができない現状を踏まえ、労災上乗せ保険の死亡給付金について、中小企業の経営者や安全担当者向けに詳しく解説します。
実際の事故事例から見えるリスクと、適切な保険対策の重要性をお伝えします。

目次

令和6年5月 埼玉県越谷市重機転落事故の概要

事故の基本情報

  • 発生時期:令和6年5月
  • 発生場所:埼玉県越谷市の橋脚補強工事現場
  • 事故概要:重機を運転していた建設作業員が重機とともに川に転落
  • 被害状況:作業員は約2時間半後に水中から救助されるも、現場で死亡が確認された
  • 作業状況:川に浮かべた台船(作業用足場)の上で重機を使った橋脚補強作業中

この事故は、建設業界で頻繁に発生する重機関連事故の典型例です。
水上作業という特殊環境下での作業により、救助の困難さが被害拡大につながったケースといえます。

厚生労働省の「令和4年労働災害発生状況」によると、建設業の労災死亡者数は年間281人で、その中でも重機・建設機械による事故は重大災害の主要因となっています¹。

事故から見える建設現場の3つの重大リスク

1. 水上作業特有の危険性

台船での作業は、陸上作業と比較して以下の危険が増大します。

  • 足場の不安定性による転落リスク
  • 水中転落時の救助困難
  • 重機の重量による台船バランスの不安定化

国土交通省の調査では、水上工事での死亡事故率は陸上工事の約3倍に上ることが報告されています。

2. 重機操作に伴う死亡リスク

建設現場での重機事故の特徴

  • 機械の重量により事故発生時の被害が甚大
  • 狭い作業空間での操作ミス
  • 他の作業員との連携不足による巻き込み事故

建設業労働災害防止協会の統計では、重機関連事故の約60%が死亡または重篤な後遺障害につながっています。

3. 救助体制の限界

今回の事故では救助まで約2時間半を要しました。これは以下の要因が考えられます。

  • 水中からの救助作業の複雑性
  • 専門救助隊の到着時間
  • 重機に挟まれた状態での救助困難

迅速な救助ができない環境での作業は、軽微な事故でも重大な結果を招く可能性があります。

労災上乗せ保険の死亡給付金とは?

基本的な仕組み

労災上乗せ保険の死亡給付金は、従業員が業務中の事故で死亡した場合に、政府労災保険の給付に加えて支払われる補償です。企業が従業員の遺族に対する経済的責任を果たすための重要な仕組みといえます。

主な特徴

  • 政府労災保険とは別に支払われる上乗せ補償
  • 企業が設定した金額(通常500万円~1億円)を一時金で支給
  • 労災認定を待たずに迅速な支払いが可能
  • 法定外補償規定に基づく企業の責任をカバー

支払条件と給付内容

死亡給付金が支払われる条件

  1. 業務従事中の事故による死亡
  2. 通勤中の事故による死亡
  3. 事故発生から180日以内の死亡(傷害の場合)

給付額の設定方法

  • 企業の法定外補償規定に基づいて設定
  • 一般的には100万円~1億円の範囲
  • 役員・従業員で金額を分けて設定可能

実際の活用事例 重機事故での死亡給付金

ケーススタディ 建設会社A社の事例

  • 従業員数 50名の建設会社
  • 業務内容 土木工事・橋梁工事
  • 加入保険 労災上乗せ保険(死亡給付金3,000万円)

事故概要

  • ダンプカーとの接触により重機オペレーター(45歳・妻子2人)が死亡
  • 政府労災認定:業務災害として認定

補償内容の比較

補償項目政府労災保険のみ労災上乗せ保険 加入時
遺族補償年金約240万円/年 × 約15年 = 3,600万円左記同額
遺族特別年金約48万円/年 × 約15年 = 約720万円左記同額
葬祭料約60万円左記同額
死亡給付金なし3,000万円
慰謝料相当額なしカバーあり(契約内容による)
補償合計(概算)約4,380万円約7,380万円

建設業界特有の死亡給付金のメリット

  • 経営事項審査での加点

    建設業の経営事項審査では、法定外労働災害補償制度の加入により15点の加点を受けることができます。これは公共工事の入札参加において競争力向上につながる重要な要素です。
  • 下請業者への配慮

    建設現場では元請・下請の関係が複雑です。労災上乗せ保険により下請業者の従業員も補償対象となるため、協力会社との信頼関係構築に効果的です。
  • 一人親方対策

    政府労災保険の特別加入をしていない一人親方でも、元請の労災上乗せ保険でカバーできる場合があります(契約内容により異なる)。

労災上乗せ保険で企業を守る

今回の埼玉県越谷市での重機転落事故は、建設現場に潜む死亡リスクの深刻さを改めて示しました。政府労災保険だけでは、遺族の生活保障や企業の経営安定において十分とはいえない現状があります。

建設業界では、安全対策の強化と並行して、万が一の事故に備えた保険対策が不可欠です。従業員とその家族を守り、企業経営を安定させるために、労災上乗せ保険の導入を検討されることをお勧めします。

労災上乗せ保険についてもっと詳しく知りたい方、自社に最適な補償内容の相談をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。建設業界に精通した専門スタッフが、貴社の状況に応じた最適なプランをご提案いたします。

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